2012年5月30日水曜日

摩周湖通信




高層ビルに囲まれた都会のコンクリートジャングルに生活していると、季節の移り変わりは自然の営みから感じとられる春夏秋冬よりも、街行く人々が纏う服飾の変化からいっそう鋭敏に感じとられる。


大都会の先進医療を掲げる施設に居続けると、人が自然の一部として存在していることを思わず知らず忘れてしまう。強化チタニウム製の人工関節、臓器移植、機械の心臓、コンピューター制御されたロボットアーム、、、命の移ろいに徹底抗戦を宣言するのが先進医療。そしてそれを支えるのが我らが役目。


当科では遥か北国にも業務連携している施設がある。全霊を包み込むような自然と温泉が都会の生活で荒んだ心と体を癒してくれる。

ここ摩周湖畔の小さな北国の街では、四季は空気、水、光から体に染み入るように感じられてくる。


厳冬の深雪で埋もれた大地にも遅い春は巡る。固く凍結した大地からも緑が芽生え、小鳥がさえずり、川面は春の光を眩しく反射する。ここではすべての命は生まれるべくして生まれ、死すべくしてその命を終える。


遅い春陽に輝く石狩川の流れに沿いながら川辺を歩くと心揺られ、いにしえの無常随筆が思いうかぶ。

「行く川の流れは絶えずして しかも元の水にあらず

澱みに浮かぶうたかたは かつ消えかつ結びて 久しくとどまることなし

世の中にある 人の世と住処と またかくの如し、、、」

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