2013年11月10日日曜日

患者搬送!! マレーシアにて

先生方


東京はもうすっかり冬らしくなってきた頃でしょうか。

皆様お元気でいらっしゃいますか?

先月、シンガポールでのアジア心臓麻酔学会では思いがけず女子医大の先生方にたくさんお会いでき、とても楽しかったです。



さて、少し前のことになりますが、ICUの入院患者さんを他院に搬送する機会がありました。



患者さんはご高齢の胸部大動脈瘤のため、ステントグラフト治療(TEVAR:thoracic endovascular aortic repair)目的に、マレーシア内の大学病院から当院に搬送され治療を受けた方です。TEVARは女子医大でも近年盛んに行われている新しい治療法ですが、マレーシアではここ国立心臓病センターでしか行っていないそうです。意外?にもマレーシアは最先端の治療法、医療機器などの導入が非常に早く、業者さんによるとマレーシアが世界に先駆けて世界で一番早いこともあるそうです(政府の認可が厳しくないためのようですが)。

とにかく、この患者さんはクアラルンプールから遠く離れたマレー半島東海岸タイ国境に近いコタ・バルというところからはるばる搬送されてきました。東京ー神戸間くらいの距離があります。
 
 
 
 
 
 
 
 


残念ながらこの患者さんは術後脳梗塞を発症してしまったため、慢性期治療が必要とのことでご家族の住むコタ・バルまで救急車で搬送することになりました。
しかし搬送日が金曜日でイスラム教の礼拝の曜日であったことと、東京ー神戸間を車で往復ですから、早朝に出発しても確実に帰りは深夜以降になるとわかっていたため、皆搬送に同伴したがりません。
そこを、「コタ・バルに行ったことないんでしょ、せっかくだから観光して帰っておいで!」などという皆の甘い言葉にだまされて(?)私が行くことになりました。
「仕事で行くのに宿泊費も飛行機代も自分で出すのはちょっなぁ・・救急車でそのまま帰ってこよう・・」と思うとともに、
万が一の場合、外国人のフェローが院外で医療行為していいのだろうか・・・と思いつつ、患者さんの状態は極めて安定していたので「まぁいいか、こんなことめったにないし!」と軽く引き受けてしまいました。

そして当日朝、以下の救急車に運転手2名、ICU看護師1名+私でクアラルンプールを出発しました。
 

 
 
 
 

救急車の中は酸素、吸引、シリンジポンプなど一通りのものはそろっていました。
最初は渋滞のクアラルンプール市内をサイレンとクラクションを鳴らしながら(日本のようには皆すんなり通してくれません、笑)押し分け押し分け楽しく(?)進んで行ったのですが、市内を抜けて30分くらいした頃には一言も言葉を発することもできないほどに状態が悪化してしまいました。
(患者さんはいたって安定していましたが、私が・・・)

整備された高速道路ではなく、ジャングルの中のうねうね道を進むのです。
(以下の写真はイメージですが、多少誇張してあります。)
 
 

 

 
 


仕方なく途中の村で停めてくれた上、助手席に座らせてくれ(なんのための同伴か・・)、ゲ◯袋をかかえながらの再出発となりました。

途中で運転手さんが交代し、助手席でうなだれている私に向かって「日本人と話すの初めて!着いたらドリアン食べる?」などと言いながらハイテンションで飛ばしていたら、急に右折してきた軽自動車とかなり派手に衝突し、相手はフロントが大破。しかし、「大丈夫大丈夫!」とそのまま走り去る、という日本ではありえないアクシデントがありました。
こんな事故なんかでもし誰かに何かあったら責任の所在は??!!と一瞬青くなりましたが、マレーシアでは医療側と患者さんのトラブルはほとんど見たことがありません。私の知らないところで外科医はいろいろ抱えているもかもしれませんが。
術後残念ながら経過が思わしくない場合でも、家族と揉めることは日本と比べほとんどないように思います。

だからいいというわけではもちろんありませんが、とにかく7時間かかって患者さんは無事に、コタ・バルに到着しました。



なんだかくどくどとずいぶん長くなってしまったので、続きは次回に。

 
 
 

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