一週間ほど前、一ヶ月に一度の総合医局会がありました。
薬の勉強会はメサペイン。癌性疼痛に関して、モルヒネやフェンタニルでも鎮痛が出来ない症例に対して使われるというお薬でした。強い薬だけあって副作用もそれなりにあるのですが、ターミナルで用いる薬剤は限られており、オピオイドローテーションもうまくいく場合とそうでない場合があります。そこへ新しい選択肢が加わるということで、外来で鎮痛に難渋している患者さんに対して検討していきたいお薬です。
メサペインのプレゼンに来ていただいた業者の方は、とてもわかり易く解説してくださいました。印象的だったのは三段階除痛ラダーのさらに上に当たる、という部分です。4段階目とおっしゃる先生や3.5段階目とおっしゃる先生もいらっしゃるようですが、つまりは天井をつきやぶる新しい薬だといえるのかもしれません。
処方するにはe-learningでしっかりと時間をかけて学んだ後、3回失敗するとロックがかかる試験(時間経過でロックは解除される)に合格しなければ、この薬を処方することは出来ないそうです。
なかなか敷居が高いお薬ですが、そもそも私達は普段、薬剤を簡単に処方しすぎなのかもしれません。薬は毒にも薬にもなります。抗生物質も、本来毒物を薄めたようなものです。強い薬ということはそれだけ強い危険も含むため、この措置は当然なのかもしれません。
なかなか使うまでには様々な条件が必要なメサペインですが、薬価は他の麻薬性鎮痛薬よりも安いそうです。もし変更を考慮した場合、そこは障害にならずに良さそうです。
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そこからは臨床麻酔科学会の予演会でした。ネタバレの関係で内容をお送りすることが 残念ですが、いやはや、色んな発表がありました。研修医の先生もそこにいたのですが、感想は「発表がマニアックですね」ということでした。
なるほど……科の選択がする前の人から見ればそういうものかもしれません。
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予演会の後は、H先生のペインクリニック報告でした。症例報告形式で、外傷で足関節部位をオペされた患者さんが、その手術部位ではなく、そこへ移植するための血管を取った大腿部が痛むということで、当院ペインクリニックを受診された症例でした。
薬剤に加え、硬膜外ブロックを行ったところ、鎮痛が得られ、薬剤の量も減らすことができ、夜間就眠が得られるようになったという症例でした。
その際話されていたのが疼痛の悪循環の話です。疼痛による交感神経緊張は筋緊張と血管収縮を引き起こします。それにより痛み刺激物質の生成を引き起こすため、さらに疼痛が悪化するのです。痛みが続いているという状態そのものが、悪化の原因でもあるのです。
痛みを抱えている多くの患者さんはしばしばこの悪循環にハマってしまいがちなのだそうです。一時的な痛みを取ることが、実は根源的な治療につながるということなのですね。
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この盛り沢山な医局会が終わった後、麻酔科公式医局説明会がありました。雨も降り寒い中、沢山の方がお越しくださいました。私練士Kも医局会で消耗した身体を引きずって出席しました。
一次会終了後、傘が無い見学者を駅まで送っていったところ、なんと二次会メンバーとはぐれてしまったのです。二次会に行きそうなメンツに電話をかけてみると、先に帰ったという返事ばかり……。二次会会場を探すことが出来ずに神楽坂の街を30分ほど彷徨いました。
携帯を見てみましたが、こんな日に限って、二次会幹事の携帯番号が電話帳に入っておりません。なんとか色んな人から連絡先を聞き、最終的には二次会会場にたどり着きました。ショックなことに、一次会会場から5分もあるかないほどの距離にあったのです。
寒い雨の中を薄着で彷徨い、もう少しでルーベンスの絵をみることになりそうだった、練士Kでした。